商品説明
内容
明恵(1173~1232 承安3―貞永1)は、山城高山寺の開山で、華厳宗中興の祖です。16歳のころ東大寺で受戒、顕密諸学を
畿内の諸学僧に学び、1206(建永1)後鳥羽上皇より栂尾山を賜わり、高山寺を創建して華厳興隆の道場としました。
戒律を重んじ、念仏の徒の進出に対抗し、顕密諸宗の復興に努力し、『摧邪輪(ざいじゃりん)』(法然の専修念仏は菩提心を
否定すると批判する論書)を著します。数度にわたってインド旅行を計画しましたが病のため実現できなかったといいます。
承久の乱(1221)では敗兵をかくまったり、死んだ武士たちの妻のために尼寺の善妙寺を開くなどしました。
遺訓に「人は阿留辺幾夜宇和(あるべきようは)と云う七文字をたもつべきなり」と述べて持戒の心構えを示し、また毎夜の夢を
つづった『夢記(ゆめのき)』も遺しています。これはユング心理学の第一人者河合隼雄に大きな影響を与えました。
臨済宗の祖、栄西が宋から伝来した茶の種を栂尾山にまいて栽培したことも有名で、和歌も多く残しました。
本書は日本文化にも影響を遺した名僧の生涯と思想を知るための入門書といえましょう。
著者紹介
粕谷隆宣 かすや りゅうせん
一九七二年茨城県日立市生まれ。大正大学大学院博士課程修了。現在、大正大学仏教学部准教授・真言宗豊山派総合研究院宗学研究所
研究員。満泉寺住職。専門は日本中世仏教、とくに明恵上人の思想と儀礼研究。真言密教との関係性を軸に、当時の真言宗僧の著作や
古写本の分析を通じて、明恵思想の展開を探究している。また本山特派布教師として、地域寺院や研修等の布教・教育活動にも従事。
主な論文に「明恵の『厳密』思想再考―石井教道氏の旧蔵資料をめぐって―」(『密教学研究』第56号 二〇二四)、「明恵の治病
修法について」(『豊山学報』第66号 二〇二三)などがある。共著に田中純男編『釈迦信仰の世界―日本からインドへたどる』
(ノンブル社 二〇一六)、高橋尚夫・木村秀明・野口圭也・大塚伸夫編『初期密教 思想・信仰・文化』(春秋社 二〇一三)ほか。
備考